会社案内 岐阜県各務原市の稲葉工作所

切削加工を生業としたくて創業をしてから、33年が経過しました。

最近、私は度々奈良を訪れるようになりました。そこで目にする物は国宝や文化財だけではなく、千数百年前の職人の心です。
多くの建物や仏像に目を惹かれますが、その制作者についてはほとんどわかっていません。しかし、千数百年生き残ってきた物のすごさを支えているのは、卓越した技を持つ職人の技術と心だと感じています。
職人は物を残すが名前は残らない。なぜなら、仏像も大伽藍を形成する建物群や装飾品もその時代においては芸術品ではなく実用品だったからだと思います。

小さな厨子の扉を支える鉄の金具を見て思う事があるのです。今なら簡単に製作出来るような物でも、当時は道具も動力も無いのに、人力でよくこれだけ精巧な物を作ることが出来たという想いと、職人の並々ならぬ工夫や心意気に感激を覚えるのです。
数々の製造物を見ながら、現代の道具や機械に頼って半端な仕事をしている自分が恥ずかしくさえ感じます。
現代の物作りに携わる自分が過去の職人に恥じないように出来る事はなんなのか。今、ひとつの結論は物を作る時の思いやりの気持ちです。
私たちが作る部品には、それを使ってくださる方々がいらっしゃいます。その方々に対して、私たちが作った部品を使う上で不具合があったり、見栄えが悪くて気分を害する事が無いよう、心配りをしようと思うのです。

工場が狭いので大きな部品は手がけないようにしています。小さな部品は目立ちませんが重要です。小さな物にこそ自分たちの能力を発揮する場所があると思い、手がけて参りました。

まだまだ修行中ですが、名も残さず偉業を成し遂げた過去の職人さんたちに恥じる事が無い仕事をして行きたいと思っています。